瀧本歯科医院 / 三鷹
●紹介
三鷹駅前の商業施設内にある歯科医院。地上1〜3階では、商業施設「トリコナ」が運営されており、3階医療モールエリアの一画にある。アメリカで歯の根管治療を研究をしてきた医師が、テキサス州立大学で専門医の取得を期に帰国し開業された。一般的な歯科医院では扱えない治療を提供する為に、メインとなる治療室は完全予約制となっており、設備も特別な仕様となっている。
新規商業施設内のテナントであった為に、入居予定の1年前から打ち合わせを重ねたプロジェクト。工事の直前まで医師はアメリカに滞在していることが多く、打ち合わせはインターネット上で行なったが支障無く進める事が出来た。
年: | 2019.03 |
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用途: | 歯科医院 |
所在地: | 東京都三鷹市下連雀3丁目 |
延床面積: | 82.5㎡ |
基本設計・デザイン監修・設計監理: | 湊健雄事務所 |
実施設計・施工: | 建創 http://www.k-kenso.jp/ |
撮影: | 乙咩 海太 https://www.otomekaita.com/ |
設計期間: | 2018.04-2018.11 |
監理期間: | 2018.12-2019.03 |
医院HP: | https://www.mitaka-endodontics.com/ |
●平面計画とファサードについて
歯科医院は、保健所によって複数用途の空間を求められる。患者と医療従事者の動線の分離、治療室とそれ以外の部屋の区画化などが主な指摘内容である。今回の区画はZ型のような歪な形状となっていたが、効率良く機能空間を配置する事ができた。
完成平面は、テナントスペースの中心にある既存柱の周りを回るような動線でデザインし、そこから放射状にアクセスできるように部屋を配置した案である。余分なスペースが生まれないようにしながら、行き止まり感や壁の圧迫感を抑えた計画となっている。
また、専門的な治療領域を持つ歯科医院の仕様の一つとして、レントゲン室以外にもレントゲンの撮影が可能な特別室を設計した。平面図の茶色の壁がX線遮断壁である。
施主の父と祖父が経営していた歯科医院を引き継ぐ形で開業されたので、ファサードのデザインは集客を促すような派手なモノでなく、落ち着いた目立たないものを要望された。そこで、一種類の壁紙だけを用いるだけとして、内装の雰囲気が漏れ出るように、その色味と質感を慎重に選定した。
看板は必要ないという意向であったが、保健所の検査に必要なため、シンプルで小さな看板を内装床材を利用して湊事務所で制作した。また、他テナントの看板がギラギラと輝く中、廊下の先からでもスッキリと見えるようなアイキャッチとなる置き電光看板の設置を提案した。歯科医院の名称を記載するのが普通だが、歯科医院であるという印象を根源的にイメージだけで伝えられないかと考え、ミニマルに少し劇画調の歯のイメージだけをデザインとしている。
●内装について
「日本の一般的な歯科医院のようなポップな色味ではなく、アメリカの医療施設で感じた雰囲気を表現してほしい。」と医師から伺い、参考に現地の写真を見せてもらった。そして、彩度が低いパステル調の落ち着いた色味を使う事と大工道具のようなアメリカの武骨な医療プロダクトが似合う質感を使う事をコンセプトに内装材を決めていった。
主素材は、光の具合でライトベージュともダークベージュとも見えるテキサスの土の色のような壁紙と、ぶっきらぼうな工房の床のように見えるモルタル調の灰色の床材である。その雰囲気を補完するように、既製品扉の色味や家具の色味、医療器具の張地の色などを選別した。また、照明の色は電球色を選んでおり、温かい色味を全体に追加して、既製素材の白や灰色が全体から浮いて見えないように、クリーム色やベージュに近づいて見えるように工夫している。
医療行為に支障が出ないように、診療エリアに進むにつれ白の清潔感のあるカラーに緩やかに切り替わるよう、壁紙を白く、照明も白昼色に切り替えている。
●その他 コンクリート柱のこし 和風ソファと和風シャンデリア
テナントの中心にあるコンクリート柱は、隠す事を前提に作られており、生々しく荒々しい武骨な表情を持っていた。現場見学を数回する内に、それが荒野に生えるサボテンのように、歪さが愛らしく見えてきて、今回の空間にマッチする印象的なアイコンになるだろうと期待して残し扱った。
色味が穏やかな空間は和の空間にも通ずる所があり、特に入口空間のソファベンチとシャンデリアは、結果として少し和風なものを選ぶこととなった。