SNS展 #もしもSNSがなかったら / アーツ千代田3331
●紹介
LINEをはじめ、FacebookやTwitter、Instagramといった様々なSNSについての企画展。湊事務所が入所している、旧練成中学校の校舎を改修して作られた文化芸術施設"アーツ千代田3331"の1階メインギャラリーで行われた。
あらためてSNSの存在についての問いかけを社会へ行うとともに、SNS上で活躍しているインフルエンサー達が、「#もしもSNSがなかったら」をテーマにオリジナル作品を発表した。
また、公募期間の間にInstagram / Twitterで集まった「#もしもSNSがなかったら」がつけられた2000を超える投稿の中から選出された公募作品の展示も行われ、その投稿の一部を用いたインスタレーション作品も制作展示された。
年: | 2018.05 |
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用途: | 展示会 |
所在地: | 東京都千代田区 アーツ千代田3331 |
延床面積: | 550㎡ |
設計会場構成: | 湊健雄事務所 |
施工: | sakumotto/湊健雄事務所/3331施工チーム |
施主: | 株式会社CINRA https://www.cinra.net/ |
施主: | 『She is』 https://sheishere.jp/ |
特別協賛: | LINEモバイル https://mobile.line.me/ |
写真: | 小河原万里花 (CINRA,Inc) |
設計・施工期間: | 2018.04〜2018.05 |
●3331での展示会場構成の仕事について
知人アートディレクターが3331で展示を企画しており、その施設内に事務所がある弊社に会場構成の仕事の依頼がきた。依頼から開催までが一カ月と非常に短期間だったが、少し足を動かして3階から1階に向かえばすぐに現場を確認できる事と、施設内にいる顔見知りの3331施工チームに施工に加わってもらった事で、調整や監理も容易となり、迅速に作業を進める事が出来た。
今後、3331内の会社が企画する展示の仕事が出来れば、場所も企画も構成も3331内で完結するイベントの共同体が出来るので、非常に効率的な仕事の進め方が出来て良いだろうなと期待している。もし、何か検討している案件があればお声がけください。
●会場構成と作品施工について
会場はエントランスエリアと「NEWS&FEED」「TWEET&DIARY」「GALLERY&PHOTO」「MESSAGE」という4つの異なるテーマを持った展示ゾーンへと分けられ、そこへ12人の作家作品と公募作品が分類配置されている。作品の内容を分類する作業も湊事務所が手伝った。
「NEWS&FEED」では、延々とスクロールする画面のような展示空間をデザインした。
天井から床へとロール状に続く壁と床を数種類の長さや幅で作り、そこに展示作品を印刷したり置いたりしている。既存の壁には展示を行なわずに、少し見通しを悪くなるように展示ロールを垂らす事で、空間のエッジを把握しづらくさせ、既存の白く膨張したような空間の中に、その展示内容が流れていくような印象をデザインしている。
「TWEET&DIARY」では、文字が空間を浮遊しているかのような展示作品のディティールをデザインした。
最果タヒさんの詩作品と取り巻く公募作品を使って、文字が浮いている空間をAYONDの佐々木俊さんがインスタレーションとしてデザインし、実際にそれをどう作っていくのかをアートディレクターと素材メーカーと共に考えつつ、部材発注と現場施工とバランス調整を行った。整然と設置した事でパッと見だと孤独を感じがちな都市のような空間の印象だが、個々で浮遊する文字をよく見ると、様々な思考がSNSで繋がっている事を証明していて、中に入ると温かみのあるモヤに囲まれるような感覚になる。照明計画も任されていたので、透明なアクリルに印刷された白文字を白い空間にふわっと浮き立たせるために、明るさと暗さのバランスを上手い具合に調整している。
「GALLERY&PHOTO」では、正方形のイメージを空間の重要な要素として、グリッドをテーマとした展示空間をデザインした。
作家が持ち寄る作品を、そのグリッドに載せるかのようにピシッと展示した。また、その中心には、作品として鑑賞も出来つつも休憩できるモノとして、正方形イメージを張り付けた座れる直方体を作り、空間全体にグリッドが広がっていくような印象を作り出している。その直方体の内部は、3331でみかけた既存の学校ベンチなどを採寸して用いるように設計をしていて、身近ならではの機転の利かせ方を行った。
「MESSAGE」では、各作家の個々の部屋を作るように展示空間を構成した。
各作家の作品の傾向として、空間演出の要素と音出しの要素が強かったので、壁を立てて個室的な空間を用意し、その内部やスペースに設営してもらう形とした。いつもの日常の感覚を確かめるような作品の集まりであったので、少し日常の感覚に引き戻すかのように、入り口部分には、誰かの部屋に遊びにきたような休憩場所を設置している。
●コンクリート躯体からの吊り作業
会場は、吊る為の支持箇所が足りないコンクリートの改修物件である。要望として挙がった自由な配置を実現する機構を提案し実施した。
まず、天井に埋め込まれた吊りボルト穴とライティングレールの場所を全て実測して、図面に記載し、グリッド状に吊れる位置がある事を把握した。そして、展示作品の掛かったステンレス棒を天井から自由に吊るす方法として、1か所は、そのボルト穴の直下で吊り、もう1か所は、ボルト穴とボルト穴をステンレス棒で結び、その間の吊り部分を自由に動かせるようにして、吊るす角度を自由に調整できる機構を考えた。
おおがかりではない部材で、既存天井の束縛が緩み、いつもより縦横無尽な吊りの配置が出来たのは、なかなか賢いデザインだったと思う。施工にも入っていたので、配置の自由度を作り出しながら、なんとか最小限の部材として作業を減らしたいという欲求が上手くディティールを整理した。
何年か3331には入居しているが、メインギャラリーで今回の展示ほど自由に吊れた展示は見たことが無かったように思う。3331の担当者から、展示を検討する団体からあの施工方法を質問されると、時々伺うので、今までよりもう少し自由に展示者が展示出来る場所として、空間がバージョンアップするような方法を提案できたのであれば、建築家として幸いだ。
●参加作家
のん
菅本裕子(ゆうこす)
小山健
能町みね子
燃え殻
濱田英明
たなかみさき
最果タヒ
塩谷舞
UMMMI.
藤原麻里菜
東佳苗